memories 7 【想像】
私の体験を綴ります。30年以上、もっと前の話。こちらは1999年〜2004年頃に私が運営していましたホームページからの転載です。当時【episode】として掲載してましたが【memories】の方がしっくりくるかと。
【想像】
プラグを見ていると時間が経つのも忘れた。当時、中学校の仲間内でバス釣りが定着すると、いろんなプラグを見る機会が増えた。
鮮やかな色彩のプラグ、変なカタチのルアー、とても高価な物も。
釣りに行くたびに誰かが新しいプラグを持っていたし、新しいルアーを買った奴は自慢するために学校へ持ちこんだ。この頃から、スペックにうるさい人、ブランドにこだわる人、釣具屋の店主の言いなりの人、そしてトップウォーターにこだわる人と、色々見えてきた。
後に大人になっても、このそれぞれの価値観は変わらないのであろうと思った。
学校では、あまり話をしない同級生が近づいてきて、バス釣りの話をするようにもなった。
こうして新しい仲間が増えていき、一緒に釣りに行く機会も増えて来る。
そうなると気になるのが、そうした彼等のタックルボックスの中身。結構、色々な物があった。
彼等のほとんどが【ラパラ】や【Zara】を持っていた。【Zara】で釣ったという話は聞かなかったが…。
自分が持っていないプラグには自然と目がいった。
【フラッター フィン】なんていう玉浮きみたいなプラグ。【スパターバグ】も怪しい物だった。
【210サーフェイス】なんか偉そうにエリマキ付きでどうやって使うのか疑問だったが、当然【Zara】より多彩な動きを期待した。
そして品評会が始まる。
気に入ったプラグを誰かのタックルボックスで見つけると、個人的に交渉を行い、自分の手持ちのプラグの中から適当な交渉材料を選んでトレードを行う。駆け引きが必要だ。直接お金で解決する金持ち君も居た。
1日だけのレンタル移籍もあった。
この戦力補強か所有欲を満たす行為は、僕らのバス釣りの楽しみ方のひとつでもあった。
【バルサ50】は僕らの究極のアイテムでトレードされたプラグは見たことがない。プロテクトリスト。
もちろん自分にとって良いトレードばかりではなく、失敗もあった訳だけど。
スイムテストが出来る状況や、既知であれば間違いも少ないんだけど、学校の廊下や帰り道で開かれる品評会でのトレードはリスクがあった。
見た目から、動きを想像するの難しい。
そして、愉しい。
タックルショップでも、アヤシイモノを見ていると時間が経つのも忘れて、その動きを想像した。
特にトップウォータープラグであろうモノには、他のプラグ以上に想像力を必要とした。
リップのあるプラグは分かりやすい。筈だったが【スピナーテール バングオー】これはリスキーだった。当然、どういうアクションをするのか分からない。ラインを引っ張った時はどう動く?緩めた時は?潜るの?
想像して、ショップで購入した。
プラグの作り手が試行錯誤を繰り返して世に送り出した傑作。
『これでどうだ!コイツの動きが想像出来るか!』
なんて言ったかどうか判らないが、そういう切り口でいうと【Crazy crawler】や【Jitter bug】は世紀の発明であると、僕は考える。
全く知らないでいて、あの動き、音は想像出来ない。
特に【Crazy crawler】に関しては、キャスト時に腕が折りたたまれて空気抵抗を減らし飛距離を稼ぐ。プラグが回転する事も防ぐ。で、アクションはご存知の通り。見た目も愛嬌たっぷり。
Jim Donaly氏の生み出した魔法は今でも効果的で、釣り人と魚の両方を誘惑し続けている。
偉大な先人は、この60年後か70年後を想像出来たのであろうか?
©︎ 1999 yukkylucky13