memories 8 【答え】
私の体験を綴ります。30年以上、もっと前の話。こちらは1999年〜2004年頃に私が運営していましたホームページからの転載です。当時【episode】として掲載してましたが【memories】の方がしっくりくるかと。
【答え】
テスト前に勉強をする事は殆どなかった。テスト期間中はサッカー部の練習が無いので、今がチャンスと釣りばかりしていた。
将軍”プラティニが白黒のユニホームを着て、国立競技場で寝そべるよりもっと前の話。
久しぶりに夕焼け空の下でトップウォーターゲームが出来ると思うと、学校の授業なんて退屈でそわそわする暇つぶし以外のナニモノでもなかった。
そして待望の放課後、前日から準備していたプラグを5、6個持っていつもとは違うO池に向かった。
僕の【Dying flutter】には得意技がある。
プロペラが回るかどうか位のスピードでリトリーブ。ボディが少しだけ揺れるようにストップ&ゴー。操るのも難しく、愉しく、よく釣れた。
プロペラの角度やラインの結束位置にはとても気を使う時期とも言えた。夕暮れの水面に創る小さい波紋は、緊張感を高めてくれる。
【Baby zara】もよく使った。 黄色い骨模様の奴で、愛嬌のある目をしていた。アクションはポーズをほとんど入れないドッグウォーク。手が疲れた時だけポーズを入れる。これは本当によく釣れた。O池では護岸のストレートで、T池では大雨の後の流れ込みで、連続して釣った事もある。
テスト期間中のO池。
何故だか今日は釣れない、どころか反応も無い。授業中から楽しみにしていた今日の釣り。 裏腹にバスからの反応がなくて手返しだけが増えていく。
夕暮れの中、結果が出ないので焦ってくる。暗くなるまでになんとか一尾でもキャッチしたかったが結局、叶わなかった。その日だけで無く、翌日、翌週、なんと数ヶ月も釣れない日が続いてしまった。
あまりにも釣れないものだから、ワームなんかも使ってみたけど5分もせずにまたトップウォータープラグを結び直す。釣れないと分かっていても気が付いたらそうしてた。
何故、釣れないと分かっていてもトップウォータープラグを使ってしまうのだろう。
タックルボックスにはワーム以外にもクランクベイトやミノーも一応はあったのに、ラインの先には何時も同じようなプラグばかり結んでした。
ふり返り、考えて、答えが出た。
プロセスやスタイル、限られた条件のなかで最大限に努力する事をも愉しむ。そして水面が割れ、魚を誘惑した事が実感出来るこのゲームにすっかり魅せられていたのだ。
なかなか釣れないトップウォーターゲーム。
最初はバイトシーンやそれに使うプラグが新鮮だったが、今でも飽きる事なく長い間、続いている。
“静寂が興奮に変わる瞬間が至福のひととき”
答えが分かったところで、すぐにはバスは釣れなかった。スランプは続くのだ。
学校でのテストの答えは出てくる筈も無かった。勉強せずに釣りばかりしていては酷いものだ。
寝そべりたくもなる。
©︎ 1999 yukkylucky13