memories 20 【期待】
私の体験を綴ります。30年以上、もっと前の話。こちらは1999年〜2004年頃に私が運営していましたホームページからの転載です。当時【episode】として掲載してましたが【memories】の方がしっくりくるかと。
【期待】
そこへ投げると必ずバスが釣れた。
学校帰りの小さな野池、小さな流れ込み。数回ほど続いたが、同じバスだろうか?
決まって同じようなサイズの魚だった。しかし、今でも悔やまれるのは魚を誘惑したそのプラグが、たまたま使った接続金具から外れて魚と共に水中に消えていった事。そしてそれが最後のシーンだった。
友達か相棒だったそのプラグ。
必死に探したが魚が彼を外そうと一度だけ水面にジャンプして以来、もう見ることはなかった。
どこにも浮かび上がっては、来なかった。
Heddonのそのプラグ。
精一杯に腕を広げて、必死に泳ぐその姿。
学校で背の高さ順に並んでも、毎回先頭に立つ僕のような体格には見習うべき対象にさえ思えた。
頑張れば報われる。
人には個々に得意な分野があり、能力がある。
自分に何が出来て、何が出来ないか。
出来ない事は特に意識して、他で補う。
大きなアピールは出来ないが、小さな体全体を使って、時には休む事でその期待された役目を果たす。
期待に応え、喜んでくれる顔が見たくて。
それなのに。
期待した側が準備や配慮を怠った所為で、
期待された側は不遇にあう。
更には、魚も報われない。
なんとか結果を出そうとする彼ら。
こちらも彼らが期待する出来る限りの準備をしなくてはいけなかった。
きっと、本当に悔しいのは期待した側よりも、
期待された側なのかも知れないのだから。
©︎ 1999 yukkylucky13