memories 18 【Big Lush】
私の体験を綴ります。30年以上、もっと前の話。こちらは1999年〜2004年頃に私が運営していましたホームページからの転載です。当時【episode】として掲載してましたが【memories】の方がしっくりくるかと。
【Big Lush】
西の湖に到着した3人。
大きいボートを借りて3人で乗り込んだ。
僕より背の低い社会人のAさんの釣りはどんなルアーでも使うオールラウンド。ルアーのメーカーなどにコダワリは無い。
無口のBさんは、バス釣り初心者。Aさんの指示通りに釣りをする。
二人とも自動車で峠道なんかを走るのが趣味で、ここに来るまでにAさんの車に同乗させて貰った僕は、人生で初めて“走り屋”の助手席に座り、何度も死を予感した。
彼等は車を完璧にコントロール下に置いていると言っていたが、僕にはそんな風に思えなかった。
「大丈夫、だいじょうぶ。今、蓋の無い側溝だけどタイヤ半分乗ってるから!」
そんなギリギリのところ、走る?
何が楽しいのか、さっぱり分からない。
ま、無事?に到着しルアーをキャストしているのだから良いのだけど、釣れるのは彼等ばかりで僕は一日中釣れてない。ボートの上でのペースも彼等のもので僕は外様。
なんといっても、彼等は何にも無い沖合いにボートをステイさせ闇雲にワームの類いを投げ、それでも釣れるのだから。
トップウォータープラッガーの僕は、岸沿いの葦原や構造物等のややこしいポイントが好きで、キャスティングのテクニックを駆使し次々に打って行きたいのだが、どうやら叶いそうにない。
ピーカンの空、目標物なし、ポイント移動なし。気持ちも入らないし、こんな時にもし釣れてもきっと嬉しくないだろう。釣れないけど。
ボートの返却時間となり岸に上がった3人は、その後、歩いて釣りの出来る場所を探しながら流入河川側へ移動。
何ヵ所かキャスト可能な場所があったが、当然、先行者がいる。それでも探し歩いているとなんとかなりそうな場所がいくつか見つかり、ここから3人で散り散りになり、暗くなるまでの1〜2時間の釣りとなった。
僕は一日中釣れていない。釣れないのはいつもの事だからまだ良いけど、様々な目標物に対して、僕の理解としての意味のあるキャスティングが出来ておらず欲求不満。
今いる岸辺のこの場所からも、狙える目標物は沖目の小さな葦の群落だけ。
1投目は集中出来る。
2投目も。3投目も…。
一日中釣り人が入れ替わり立ち替わりしていたであろうポイントで粘っても、5投もすればポイントを移動したいところ。だけど次に釣りができる場所がないのて、仕方なくここに留まって釣りを続ける。
まったく…
Big Lushを結ぶ。
ボートでの釣りで溜まったキャスティングの不満は目標物があるから我慢できる。残るストレスはプラグを操る事で解消しようと考えた。
ひたすら同じ場所、沖の葦の島にプラグを届け、着水後はしばらくポーズをとり、ワンアクション目が綺麗にスライドする事だけに集中する。 僕のトップウォーターゲームでは “着水 → ポーズ → ワンアクション目のバイト” これが、至高であり目指している。 ポーズが長くなるとラインが沈んで意外と難しいが、失敗や成功のメカニズムは理解している。
このプラグはとても良く出来ている。きちんと準備すれば気持ちの良いロングスライドが決まる。
少し、気持ちが楽になった。
太陽が山の向こうに消えてから、どれくらいの時間が過ぎただろう。何十回投げたか分からない沖の葦島。相変わらず同じ場所に着水したBig Lush。
ポーズの後の最初のアクションに
「ドーン!」
低い音に重量感のある引き。
45cmくらいだけど、体高のあるプロポーションをキャッチ。
僕がクサラズ黙々とキャストを繰り返していた事へのご褒美か、それともBig Lushの魔力か。
釣り方、狙い方に満足はしてないけど、とても印象に残るシーン。
Aさんがやってきて写真を撮ってくれた。遠慮したかったけどせっかくの申し出だし、僕ひとりで憮然としてたらお二人に悪い。
聞くと彼等も50cmを超えるバスをそれぞれキャッチしたらしい。魔力は他のルアーにもあったようだが、僕のBig Lushに対す信頼は更に増した。
帰り道の峠越えも、彼等は楽しそうだ。
僕は助手席の窓に自分の顔を見ながら、さっきのバイトシーンを思い出す。
文中. :Big Lush → 製品名 : BIG LUSH
©︎ 1999. yukkylucky13